ぜんそくのある人の多くは吸入器を2つ持っていて、どちらがどちらかよくわからないこともよくあります。一つはゼーゼーするたびに使うもの。もう一つは調子のよい週は引き出しにしまわれ、具合が悪くなると出てくるもの。思い当たるなら、引き出しのほうがおそらく毎日使うはずの吸入器です。
このガイドでは、2種類の吸入器の働き、毎日使うほうが調子のよい日にこそ大切な理由、そして必要なときにどちらも切らさないための吸入回数の管理方法を説明します。内容は一般的な情報です。ご自身の吸入器、用量、治療計画は医師、看護師、薬剤師が決めるもので、変更について相談すべき相手もその人たちです。
2つの役割、2つの吸入器
ぜんそくでは、気道で2つのことが起きています。一つは炎症で、気道の内側が長く腫れて敏感になっている状態です。もう一つは収縮で、気道のまわりの筋肉が締めつけられ、息がしにくくなる状態です。ぜんそくの吸入器の多くは、このどちらかを狙っています。
発作治療薬(リリーバー)の吸入器
発作治療薬は収縮に作用します。気道の筋肉をすばやく、通常は数分以内にゆるめるので、せき、ゼーゼーする呼吸、胸の締めつけ、息切れなどの症状が出始めたときに使います。英国では発作治療薬は青色のものが多く、米国ではレスキュー吸入器と呼ばれることもよくあります。
NHS(英国国民保健サービス)は、発作治療薬を症状が出たときに使う吸入器と説明しています。根本にある炎症は治療しないため、これだけでは十分ではありません。
長期管理薬(コントローラー、予防薬)の吸入器
長期管理薬は炎症に作用します。多くは低用量の吸入ステロイドを含み、気道を広げておく長時間作用型の薬と組み合わせたものもあります。米国では「コントローラー」、NHSでは「プリベンター(予防薬)」と呼ぶことが多いですが、同じ考え方の薬です。
長期管理薬はすぐには効きません。時間をかけて気道を落ち着かせ、かぜ、花粉、煙、運動などのきっかけに反応しにくくすることで、少しずつ効いていきます。そのため、医師の処方どおり、通常は決まった時間に毎日使います。
両方の役割を持つ吸入器
毎日の長期管理薬と発作治療薬の両方として使える吸入器を1つだけ処方される人もいます。NHSはこれを維持療法と発作治療を兼ねる治療法(MART)と呼んでいます。このタイプを使っている場合は、ぜんそくのアクションプランに、毎日の使い方と症状が出たときの使い方が書かれています。上の一般的な説明ではなく、そのプランに従ってください。
調子がよいときにこそ長期管理薬が大切な理由
長期管理薬が効かなくなる最もよくある原因は、使うのをやめてしまうことです。その理由はよくわかります。調子はよいし、楽にしてくれるのは発作治療薬のほうで、長期管理薬は目に見えて何かをしているようには感じられないからです。
けれども、調子がよいことこそ、長期管理薬が働いている証拠であることが多いのです。長期管理薬が抑えている炎症は、たまってくるまで自覚できません。調子のよい日に長期管理薬をやめると炎症が少しずつ戻り、次のかぜや花粉の多い日の症状が重くなることがあります。
NHSは、調子がよいときも予防薬を毎日使い、かかりつけ医(GP)やぜんそく専門の看護師に相談せずにやめないよう勧めています。米国の国立心肺血液研究所(NHLBI)の指針も同じで、長期管理薬は症状を防ぐために毎日使うものとしています。
長期管理薬で口の痛みや声がれなどの副作用が出ている場合は、医師、看護師、薬剤師に伝えてください。ステロイドの吸入後に口をすすぐことや、スペーサーを使うことがよく勧められ、ほかの選択肢がある場合もあります。解決策は相談することで、黙って使うのをやめることではありません。
発作治療薬の使用回数はサインです
発作治療薬をいつもより頻繁に必要とすることは、ぜんそくがうまくコントロールできていない最もはっきりしたサインの一つです。NHSは、吸入器がいつもより多く必要なときや、症状のためにふだんの活動ができないときは、かかりつけ医を受診するよう勧めています。
これは、発作治療薬の使用を記録しておく大きな理由の一つです。以前より多く使っている、あるいは夜中に症状で目が覚めると気づいたら、医師やぜんそく専門の看護師に伝えてください。それは発作治療薬を使い続ければよいというサインではなく、治療計画の見直しが必要なサインであることが多いのです。
症状が重い、発作治療薬が効かない、息苦しくて話せない、といった場合は、ぜんそくのアクションプランにある緊急時の手順に従い、すぐに助けを求めてください。
ぜんそくのアクションプランを用意する
ぜんそくのアクションプランは、医師や看護師と一緒に作る書面の計画で、次のことが書かれています。
- どれがどの吸入器か、それぞれ何のためのものか。
- 長期管理薬の毎日の使い方。
- 症状が悪化したときの対処を順を追って。
- すぐに助けを求めるべきとき。
NHSもNHLBIも、アクションプランを持つことを勧めています。プランがない場合や何年も前のものの場合は、次の診察で依頼しましょう。スマートフォンと自宅にそれぞれ控えを置き、ご自身やお子さんのお世話を手伝ってくれる人にも渡しておきましょう。
吸入回数と補充を管理する
どちらの吸入器もなくなることがあり、なくなり方が違います。
- 長期管理薬は決まったスケジュールで使うので、どれくらいもつかは予測できます。残りの吸入回数を1日の吸入回数で割ると、残りのおおよその日数がわかります。
- 発作治療薬は必要なときに使うので、予測しにくくなります。何か月も使わないこともあれば、調子の悪い1週間で空になることもあります。
どちらの管理も楽にするコツがいくつかあります。
- 吸入器にカウンターがあるなら、カウンターを使いましょう。推測するより確実で、使用前の試し噴霧(プライミング)も回数に含まれます。
- 新しい吸入器を開けたら、吸入器本体かスマートフォンに使い始めた日を書いておきます。
- 長期管理薬は空になる前に手配します。1週間以上の余裕があれば、週末や遅れにも対応できます。
- 発作治療薬は必要になりそうな場所に置き、期限切れや残りわずかになっていないか確認しておきます。
吸入器はどれくらいもつかのガイドでは、カウンター、試し噴霧、発作治療薬の残りの見積もり方を詳しく説明しています。吸入器の残り日数計算ツールに残りの吸入回数と1日の吸入回数を入れると、最後に全量を使える日と手配日がわかります。
長期管理薬を毎日の習慣に組み込む
長期管理薬は決まったスケジュールで使うので、朝晩の歯みがきなど、すでにしていることと結びつけると続けやすくなります。おまけもあります。ステロイドの吸入後は口をすすぐことが多いので、洗面台にいるのはちょうどよいのです。
リマインダーも役に立ちます。Dozは吸入回数を数えませんが、予定の服用時間になったらお知らせでき、重大な通知を使えば消音モード中でも届きます。服用が記録されないままなら再通知も送れます。回数そのものは、吸入器のカウンターを頼りにしてください。
よくある質問
長期管理薬と発作治療薬の吸入器の違いは何ですか?
発作治療薬は気道のまわりの筋肉をすばやくゆるめるので、症状が出始めたときに使います。長期管理薬(予防薬とも呼ばれます)は時間をかけて気道の炎症を抑えるので、症状を防ぐために毎日使います。アクションプランに書かれているとおり、両方の役割を持つ吸入器を1つだけ使う人もいます。
調子がよくても長期管理薬の吸入器を使うべきですか?
はい、そのように処方されているなら使ってください。長期管理薬は少しずつ効き、使い続けている間だけ効果があるので、調子がよいことは効いている証拠であることが多いのです。やめたり使い方を変えたりする前に、医師やぜんそく専門の看護師に相談してください。
発作治療薬の吸入器をたくさん使うのはよくないことですか?
発作治療薬をいつもより頻繁に必要とするのは、ぜんそくがうまくコントロールできていないかもしれないサインです。NHSは、吸入器を使う回数が増えたときや症状がふだんの活動に影響しているときは、かかりつけ医を受診するよう勧めています。治療計画の見直しが必要かもしれません。
長期管理薬の代わりに発作治療薬を使ってもよいですか?
代わりにはなりません。発作治療薬は症状を和らげますが、根本にある炎症は治療しません。例外は維持療法と発作治療を兼ねるよう処方された吸入器で、両方の役割を果たすよう作られています。アクションプランに従い、どちらを持っているかわからない場合は医師に確認してください。
吸入器がなくなりそうなことはどうすればわかりますか?
カウンターがあれば確認しましょう。仕組みは説明書に書かれています。長期管理薬なら、残りの吸入回数を1日に使う吸入回数で割ると、残りの日数の目安がわかります。吸入器の残り日数計算ツールはこの計算をして、手配日も示します。
まずはここから
手元の吸入器をすべて出して、どれが長期管理薬でどれが発作治療薬かを確認しましょう。それぞれのカウンターも見てください。どれがどれかわからない場合や、ぜんそくのアクションプランがない場合は、薬剤師に相談するか、ぜんそく専門の看護師の診察を予約してください。
出典
- NHS, Asthma: Treatment(ぜんそく:治療)
- National Heart, Lung, and Blood Institute, Asthma: Treatment and Action Plan(ぜんそく:治療とアクションプラン)
- MedlinePlus, Asthma - control drugs(ぜんそく:長期管理薬)